2023年04月02日
当院では、眼科診療にも力を入れてます。
動物の眼もヒトの眼と同じように情報を得る器官としてもとても大事なものですが、今までなかなか手をつけられてきませんでした。
しかし、眼はとてもデリケートな器官で一度障害を受けると(病気・外傷など)されると治療にとても時間がかかります。最悪は、失明することもあります。
今の眼の状態を知るには、特別な眼科の器具を使ってまず、「一体どうなっているの?」と調べるところから始まります。
眼科診療には、絶対欠かせない検査器具を導入しました。
1.TonoVet 眼圧計 :
「局所麻酔なし」で眼圧が測れる器具です。とても簡単に眼圧が測れます。
眼圧を測ることによって犬種特有の眼が大きい・出っ張っているなどのみためにとらわれず正常か異常かの判断もつきますし見た目には、異常に見えなくても緑内障の早期発見やぶどう膜炎の診断にも役立ちます。
2.スリットランプ :
検査器具から出す光の幅を自在に変えて眼全体の構造の観察や目の表在性の細部(角膜・まつ毛・しゅん膜)や眼の中の様子(水晶体までの中の様子)を診ます。
それによって角膜の傷や深さ・虹彩の状態・眼の中の炎症や白内障(水晶体の様子)などが把握できます。
3.眼底カメラ :
瞳孔を散瞳させて眼 の一番 奥にある網膜という組織を直視下でみます。網膜の血管の状態(太い・細い・蛇行している)や網膜自体を観察することで疾患の有無や鑑別を行います。
4.双眼倒像鏡 :
眼底を見る機器で、とてもクリアに眼底を見ることができ、網膜の異常や網膜剥離、ぶどう膜炎、免疫異常による網膜・脈絡膜・強膜炎などを迅速に診断できます。
隅角検査
緑内障素因を調べる検査で、涙の排出路を調べます。
この、くし状になっているところを、調べて綺麗にくし状になっていれば、涙の排出は良好。
ここが狭かったり、閉じていてくし状になっていなかったりすると、危険性ありと仮診断します。
ただ、臨床症状や眼底や眼圧などを総合的にみて最終的には、診断します。
よくおこる眼の病気
犬の眼の病気は、80%くらいが遺伝性といわれているため、犬種によって好発犬種と言われている子たちがいます。よくみられる病気と犬種を挙げてみました。
1.進行性網膜委縮症 | M.ダックス T.プードル |
2.乾燥性角膜炎 | シーズー チワワ パグ M.ダックス |
3.白内障(遺伝性) | 柴 ヨークシャテリア テリア系 シーズー チワワ |
4.緑内障 | 柴 コッカースパニエル ビーグル チワワ |
5.チェリーアイ | コッカ―スパニエル ビーグル ブルドック |
進行性網膜委縮症
M.ダックス T.プードル
この病気は、網膜の細胞が進行性に酸化により変性していき、視覚障害および喪失する遺伝性疾患です。
発症時期: 2歳・6歳の2峯性です。
症状
眼がビー玉みたいにきれい
眼がぎらぎらしてるというのやうちの子は、お散歩がきらい・よくソファや何かを飛び越すときに足を踏み外すなどの主訴があります。
初期は夜盲 2~3年に盲目
診断
明暗所障害物通過試験
眼底検査(網膜の状態や血管走行・視神経の状態などを確認します。)
網膜電位(網膜が活きているかを電位差で確認します。)検査
遺伝子検査(この病気には、6種類くらいの遺伝子が関与しているのですが、すべての遺伝子について調べられるわけではありません。)
乾燥性角膜炎
シーズー チワワ パグ M.ダックス
この病気は、涙腺に対する自己免疫疾患で涙腺が破壊されることにより涙が欠乏し角膜炎や角膜潰瘍をつくってしまいます。
症状
べとべとした眼やにがたくさん出る。眼が痛い。眼をつむっている。
よくみると眼がくろい(経過悪長い場合)
また、涙不足により潰瘍を作ってしまうこともよくあります。
診断
1分間の涙の産生量を測ります。
眼の形態を確認します。
症例
涙の不足により、眼の表面が乾き痛みやかゆみを生じる。
目やにが増えて黄色くべとべとにた感じになり、眼の周囲にくっつく。
眼瞼炎も併発し、眼全体が腫れぼったくぼってりした感じになる。
これは、眼瞼の結膜を診察しています。
結膜は、ぼってりと腫れ、睫毛の周りには、黄色いべとべとした眼脂がくっついています。
また、マブダの淵にマイボーム腺という涙が乾燥しないようにするための脂腺がありますが、ここが詰まっているのが見えます。
治療後です
乾燥性角結膜炎は、パグや、シーズーなどの短頭種におおく見られる眼科疾患です。此の原因は、自己免疫疾患によるものがおおいとされています。
通常の治療に反応が、少なく特殊な薬を使いましたが、角膜にも輝きが戻り、眼瞼の炎症もほとんど見られなくなりすっきりしたお顔になりました。
白内障(遺伝性)
柴 ヨークシャテリア テリア系 シーズー チワワ
ヒトと違って、紫外線の影響から来る水晶体の劣化・変性ではなく遺伝性疾患です。
ごく若齢期から発症することもあります。初期の場合は、散瞳しないと確認できないことも多いです。末期になってくると肉眼でも白くみえます。
診断
散瞳させスリットランプにより、水晶体のどこに白内障が発生しているのか、進行状況はどの程度か2次的に続発性の疾患があるか?を確認します。
症例
成熟白内障です。
水晶体が、真っ白に白濁しています。
此の後は、水晶体の崩壊が起こり、ぶどう膜炎・緑内障に進んでいくことがあります。早期の白内障手術をおすすめします。
成熟白内障のスリット画像です。
まだらの、大理石文様が、水晶体の中に存在しています。
成熟白内障です。
此の子は、虹彩の萎縮も併発しています。
今後、虹彩は、散瞳したままの状態になっていきます。
緑内障
柴 コッカースパニエル ビーグル チワワ
眼房水は眼のなかの毛様体という器官で産生されますが、眼の中を循環して排泄されるルートに問題を生じ眼房水が過剰に眼の中に蓄積される病気です。
眼のなかは急速に高眼圧になり網膜に不可逆性のダメージを与えます。
症状
急速に眼圧が上がるため強い痛みが生じ罹患した眼をつぶっていたり、まぶたが小刻みに震えたり、触ろうとすると怒ったりします。涙が流れることも。
眼を開けていると散瞳しているので(眼圧が上昇するため)緑色に見えたりします。
診断
眼圧をtono-vetで測定します。
通常25mmhgをこえていれば、疑わしいですが、上記のような症状がでているとすでに45~50mmhgだったりあるいは超えていることもあります。
また、散瞳しているので、眼の中も確認で来るため眼底カメラやスリットランプを使って続発症が出ていないかを確認します。
また、片方の眼が発症するともう一つの眼も半年から1年くらいでは発症してくるので両眼検査確認します。
チェリーアイ
チワワ コッカ―スパニエル ビーグル ブルドック
眼のなかの第3眼瞼(しゅんまく腺)といわれているものが、腫れて脱臼してしまい、あかく飛び出たようにみえます。
手術によって整復します。
症例
これは、瞬膜腺の脱臼というもので、手術によってしか改善しません。炎症や、構造の破綻や、腫瘍によって発生します。
主に犬にみられ、猫ではまれです。
いろいろな眼底
眼科疾患の具体的症例
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